ミクの歌って覚える統計入門
第4話 いったりきたり、乙女心はランダムウォーク
2008/07/01  

イ尓好(ニーハオ)、我叫未来(ウォージァオ ミク)。
今日も元気いっぱい歌うアルヨ。
・・・って、本当にアルヨっていっている中国のおともだちに、会ったことないんだけど・・・
ミク的には、「サイボーグ009」に出てくる 006、張々湖(ちゃんちゃんこ)があやしいぞ、と思ってるんだ。
それでは、今日の一曲目、いくアルヨ、じゃなくて、いっきまーす!

PLAY: ランダムウォークの歌 (MP3 Download)
迷ってるこの気持ち 50%で
進んだり戻ったり くりかえしたら
最後にはどこまでも ゆくのかな
だんだん離れて ゆくのかな

N回のステップの 全てを足して
二乗をしたならば 対角項だけ残るから
移動距離は ルートNステップに
比例する

だけどきっときっといつか 戻ってくるよね
空間が二次元まで だったなら
たとえ今は原点から 遠く離れても
たとえ今まで ずっと片方にあったとしても
   いったりきたりはルートN

青春まっただなかのみんなは、まいにち悩みでいっぱいだと思うの。
・・・なになに、おれはもう青春なんて年じゃないって?
なにじじむさいこといってんのよ!
「青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。」
そう、ミクは悩み多き年頃なのです。
こっちがいいのかな、あっちかなって、いったりきたりして、
ふと気がつくと、最初から全然すすんでいなかったりするんだよね。
なんでだろーね。

一次元ランダムウォーク そ・こ・で、サイコロ振っていったりきたりしたら、最後にはどうなるのか、ためしてみちゃいました。
まーっすぐな線を引いて、スタート地点でサイコロ振って、奇数が出たらば右に一歩、偶数が出たらば左に一歩、ってえんえんとすごろくを続けてみるの。
・・・そんなことしても無駄ですって?
青春とは、人生の無駄なのだー!
きみの無駄にありあまったエネルギーを、サイコロにぶつけてみよー!
って、そんなにエネルギーがありあまってない人は、パソコンっていう便利な道具があるから、そっちで試してみるのもいいかもね。

さてと、結果はどうなったかな?
サイコロだから、すっごく偶然右ばっかり出ちゃうって人も、左しかでませんよーって人も、右と左がぴったり半分ずつでしたーって人も、きっといると思うの。
でもきっとほとんどの人は、ほんわかと、右か左のどちらかにずれていると思うんだ。
気になるのは「ほんわか」の中身だよねー。
100人が100回ずつサイコロ振ったら、スタート地点から平均でどれだけ遠くに行けるでしょうか?

そこでやってきました、本日の計算コーナー。
えー、そんなこと計算でわかるの?
100回も計算するのやだよー、って思うかな?
とっころが、100回も計算しなくても、一気に答がわかっちゃう、あっと驚く計算方法があるんだなー。
よーく見ててね。

1回目に進んだ距離を"a1"って記号で書いてみるね。
a1 は、実際には +1 か、-1 のどっちかだよ。
2回目に進んだ距離は"a2"、3回目が"a3"、・・・あとはずっとおんなじ。
そーすると、100回で進んだ距離は
  全部の距離 = a1 + a2 + a3 + ... + a100
ってことになるよね。
ここまでは記号で書いただけ。
その次がすごいところ。
とーとつに「全部の距離の2乗」を計算してみるの。
つまり「全部の距離x全部の距離」。

 全部の距離の2乗 =
  a1 x a1 + a1 x a2 + a1 x a3 + a1 x a4 + ・・・
 + a2 x a1 + a2 x a2 + a2 x a3 + a2 x a4 + ・・・
 + a3 x a1 + a3 x a2 + a3 x a3 + a3 x a4 + ・・・
 + a4 x a1 + a4 x a2 + a4 x a3 + a4 x a4 + ・・・
  ・・・

こんなかんじに100x100の表になっちゃいます。
あっ、無駄に青春のエネルギーがあまってるからって、100行ぜーんぶ書かなくってもいいんだよ。
4つか5つで充分。
この表の中のどこでもいいんだけれど、たとえば a2 x a3 ってところに注目すると、プラス1かマイナス1のどっちかになるよね。
だって、a2 が +1 か -1 のどっちかで、a3 も +1 か -1 のどっちかなんだから。
その調子で見てゆくと、この表のぜんぶが +1 か -1 のどっちかになっちゃうのかな?
よーく見てね。
実は、そうならないところがあるんです。
それは、対角線上の a1 x a1、a2 x a2、a3 x a3、・・・っていう、自分同士を掛け算するところなの。
a1 がプラスだったら、(+1) x (+1) = (+1)、a1 がマイナスでも、(-1) x (-1) = (+1)、ほら、どっちも答はプラス1でしょ。
なので、この対角線上だけは確実にプラスになって残ります。
それ以外の場所は、プラスになるか、マイナスになるか半々なので、なんどもなんどもサイコロ振ってるうちに、平均して消えちゃうの。
そうなると、表の掛け算をぜーんぶ合わせたら

 全部の距離の2乗 = 対角線の数 = サイコロを振った回数

ってことになるよね。
見えてきたかな〜?
最初にいってた、ほんわかずれてる平均距離は、
 ほんわか平均距離 = ±√(全部の距離の2乗) = ±√(サイコロを振った回数)
ってことだよね!

つまり、サイコロふっていったりきたりしたら、だいたいルートN回だけ進むっていうこと。
100回なら10ステップ、1000回なら32ステップ、10000回なら100ステップ!
ルートの前に±が付いてるってことは、右に行くか、左に行くかは50%ずつでわかりません、ってこと。
どっちに行くかは分からないけど、ルートNで離れてゆくんだなって覚えておくと、きっといいことあります。

こんなことが計算でわかっちゃうなんて、おっどろきだと思わない?
ミクが最初に教わったときは、すっごーく感動しました。
この感動が伝わらないかなーっ、青春とは感動だ!

   きっと戻るよ原点回帰

青春の悩みのいちばん深ーいところは、いつまでもおんなじところをグルグル無限ループして、抜け出せないってことだよね。
ルートNでも、亀さんの歩みでもいいから、どこか遠くに行きたいな。
どおしてもどってきちゃうんだろうな。
そ・こ・で、サイコロ振って、スタート地点にもどってきちゃうかどうか、考えてみました。
・・・なんか強引な展開ですって?
あんたは悩み足りないのよ、そこで一生無限ループしてなさいっ!
って影の声を軽〜く流して、計算しようかなって思ったけど、まともにやったら難しくって、ミク熱暴走しちゃいそう。
なので、かんたんに雰囲気だけにするね。

2N回目にスタートに戻ってくる確率っていうのは、偶然にもだいたい √N で薄くなってゆくんだ。
なんで「2N」かっていうと、行って、帰ってくるから。
ちょうど3回目は、奇数だからスタートには戻ってこれないでしょ、だから2N。
 2回目に、戻ってくるのが 1/√(1a)、
 4回目に、戻ってくるのが 1/√(2a)、
 6回目に、戻ってくるのが 1/√(3a)、
 8回目に、戻ってくるのが 1/√(4a)、
  ・・・
こんなかんじ。
a はよくわかんないから、てきとーな数だからねっ。
これをぜーんぷ足してくと、1/√N だから、どんどんおっきくなってくよね。
ってことは、スタート地点には必ず戻ってきちゃうんです。

こんなんじゃイヤ!
もっと遠くに行きたいよー。
だったら、もっと広いところにしたら?
二次元ランダムウォーク いままで一直線の道路の上をいったりきたりしてたけど、こんどはもっと広い、野原の上にしたら遠くに行けないかな?
二次元の野原にしたら、スタートに戻ってくる確率は、だいたい N で薄くなってゆくみたい。
 2回目に、戻ってくるのが 1/(1b)、
 4回目に、戻ってくるのが 1/(2b)、
 6回目に、戻ってくるのが 1/(3b)、
 8回目に、戻ってくるのが 1/(4b)、

  ・・・
b はやっぱりよくわかんない、てきとーな数。
これもぜーんぶ足してくと、やっぱりどんどんおっきくなるよね。
だから、やっぱりいつかはスタートに戻っちゃいます。

でも、ここまで来ればあと少し。
こんどはもっともっと広い、三次元でやってみよー。
三次元にすると、スタートに戻ってくる確率は、だいたい N√N で薄くなってゆきます。
 2回目に、戻ってくるのが 1/(1√(1c))、
 4回目に、戻ってくるのが 1/(2√(2c))、
 6回目に、戻ってくるのが 1/(3√(3c))、
 8回目に、戻ってくるのが 1/(4√(4c))、
  ・・・
さーて、こんどはぜーんぶ足しても、無限におっきくならないぞ。
だから、三次元以上だともうスタートには戻ってきません。
やった! これで青春の悩みは解決だねっ!

それ以上のD次元だと、スタートに戻ってくる確率は、だいたい N^(D/2) で薄くなってゆくの。
だから、グルグル無限ループするのは2次元までってことだね。
こーいうのを「2次元コンプレックス」っていうんだよ、きっと。
恋をするなら、3次元以上だねっ!

さーて、今回はちょっぴり難しかったかなー。
今はよくわかんなくっても、後からだんだんわかってくるってことも、きっとあるんだから。

「青春時代が 夢なんて 後からほのぼの 思うもの
 青春時代の 真ん中は 道に迷っているばかり」

そんじゃねー、再見(ヅァィジエーン)。

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