ミクの歌って覚える統計入門
第5話 コインを投げたら二項分布、パスカルの三角形
2008/07/01  

Bonjour(ボンジュール)、マドモアゼルえっとムシュー。
フランスでは、勉強よりも、お仕事よりも、恋人が一番大切なんだって。
ああ、恋に恋するミクは、とっても憧れちゃいますわ!

さて、確率といえばコイン投げ、コイン投げといえば、二項分布!
今日お届けするのは、そんな二項分布の歌でーす、どうぞっ!

PLAY: 二項分布の歌 (MP3 Download)
二項分布はコンビネーションnからx
Px乗1マイナスPn引くx乗
平均はnP 分散nP1引くP
二項係数並べて書けばパスカルの三角形

確率うんと小さくしたならポアソン分布
平均と分散が等しくなるの
試行回数大きくしたなら正規分布
スターリングの公式使って確かめてみて ね
   表と裏を三角形に並べたら

まずは、おたよりコーナーから。

「はじめまして、ミク姉様。
 中学生になって、算数が急につまらなくなりました。
  (a+b)^2 = a^2 + 2ab + b^2
 みたいな記号だらけの公式を、ひたすら覚えないといけないんです。
 あーあ、私もミク姉様みたいになりたいな。」

ミク姉様・・・ア、アハハッ、そ、そういうのはちょっとね。
たしかに記号だらけの丸暗記じゃ、チョーつまんないよね。
中には、そういうツラーイのに耐えるのが好きって人もいるかもだけど、ミクにその気はないんだからねっ!
つまらないのは、きっとイメージが足りないからだと思うんだ。
(a+b)^2 ってどういうことかなって、絵をかいてみると、、、
(a+b)^2 田んぼの田の字みたいになってるんだよ。
a^2 が左上、b^2 が右下、右上と左下には ab が2つ、ほら、公式通りでしょ。
そんなのあたりまえ、だって思った?
そうなの。
わかっちゃう人は、こんなことわざわざ言わなくっても、頭の中でササッとイメージできちゃうんだ。
だから、わざわざ言わないし、学校でも教えてくれなかったりするんだなー。
でも、イメージ湧かなかった人は、記号がずらずらーって並んだの見るだけで、すっかりいやになっちゃう。
ためしにすごーく簡単なところでいいから、絵に描いてイメージを作ってみよーよ。
きっとミク姉みたいに、算数が好きになるよ! (すっかりお姉様)

それでは、イメージ作りにチャレンジ!
もう1つ数を増やして、(a+b)^3 は?
こんどは2次元の田んぼじゃなくて、3次元のお豆腐をたて、よこ、前後に、スパスパスパッと切った感じ。
(a+b)^3 全部で8個のブロックに分かれて、
 a x a x a が1個、
 a x a x b が3個、
 a x b x b が3個、
 b x b x b が1個、
だから、
(a + b)^3 = a^3 + 3 a^2 b + 3 a b^2 + b^3
ってことになるよね。

それでは、もう1つ増やして、(a+b)^4 いってみよーか?
あれ、あれれ、もう絵が描けないよー。
あきらめるのはまだはやい!
努力と根性で、何とかしちゃうのだー。
ちょっとズルして、最初から一辺をもう知っている答「a^2 + ab + ab + b^2」に置き換えちゃう、っていうのが1つの手。
(a+b)^4 こうやってブロックをよーく数えてみると、
(a + b)^4 = a^4 + 4 a^3 b + 6 a^2 b^2 + 4 a b^3 + b^4
ってなることがわかるよ。
でも、絵を描いて解くのはここまでが限界。
もう1つ増やして、次の (a+b)^5 いってみよー、って気分にはならないよねー。

でも、きっと5から先も、いままでと同じ規則で続いてるんじゃないかな。
いままでの答を、上から順番に並べてみるね。

   1 2 1
   1 3 3 1
  1 4 6 4 1

この数字は、式の中から a とか b とかぜーんぶ消しちゃって、頭にくっついている数字だけ残したもの。
たとえば最初の 1 2 1 は、1・a^2 + 2・ab + 1・b^2 の 1・2・1 だよ。
これをじーっと見ていて、何か、気がついたかなー?
ピピッときた人は、すごく勘のいい人。
なんだろなーって思っている人、どうやってこの数字の並びができるのか、考えてみるね。
1・2・1 に (a + b) を掛け算するってことは、まず 1・2・1 に a を掛けて、次に b を掛けるってことだよね。
まず 1・2・1 に a を掛けると、こんな感じに
   1 2 1
   1 2 1 0
左下に1個シフトして下がってくるよ。
次に、1・2・1 に b を掛けると、
   1 2 1
   0 1 2 1
右下に1個シフトして下がってくるね。
で、a + b で両方合わせると、
   1  2  1
   1 1+2 2+1 1
ほら、見えてきたでしょ!
隣り合った数字を、上から順序よく足して積み重ねるってことだったんだ。

      1
     1 1
     1 2 1
    1 3 3 1
    1 4 6 4 1
   1 5 10 10 5 1
  1 6 15 20 15 6 1

すごーい、かっこいいよね!
ミク姉は、ものすごーく感動しちゃいました。
ここで感動してほしいんだなー、もうっ。
こうしてできあがった三角形のことを「パスカルの三角形」っていいます。
パスカルさん天才っ!

えっ、やっぱつまんない、ただの数のお遊びじゃないかって?
チミはまだまだ読みがたりんようだにゃー。
さっきの式の中で"a"って書いたところを、「コインの表」に直します。
そんでもって"b"って書いてあったところを、「コインの裏」にしちゃいます。
するとー、この三角形は、何と、コインを投げたときに、表と裏が何回ずつ出るかって答えの表に変身しちゃいます!
たとえば、コインを2回投げたときは、
 表と表 = 1、
 表と裏 = 2、
 裏と表 = 1、
ほら、1・2・1 。
コインを3回投げたときは、
 表、表、表 = 1、
 表、表、裏 = 3、
 表、裏、裏 = 3、
 裏、裏、裏 = 1、
だから、1・3・3・1 。
すごいでしょ!

パスカルさんは「確率論」の創始者だっていわれてまーす。
この三角形を書いた人は、もっと昔からいたみたいだけど、確率と合わせたのは、たぶんパスカルさんが初めて。
三角の中に並んでる数字には「二項係数」って名前が付いてます。
a と b、2つにくっついてる数字だから「二項係数」。

二項係数にどんな意味があるかっていうと、たとえば「5回投げたうち、3回表が出るのは何パターンあるか」ってこと。
その答は、1・5・10・10・5・1 の段の左から4番目の数字(ゼロが入っているんだよ、0,1,2,3で4番目)、
つまり10ってことだね。
「5回のうちの3回」って、どっかで聞いたことがあるかなー?
そう、これが「組み合わせ」ってやつだね。(忘れちゃったかな〜?)
英語にしたら Combination(コンビネーション)。
数学の記号だと、C ってことで、53 みたいに書くんだよ。(Cがおっきくって、5と3が小さい)

   二項係数グラフに書けば二項分布

「パスカルの三角形」、ちょっぴり感動してくれたかな?
数学で一番たいせつなのは、「イメージを描くこと」なんだねっ。
そっこでー、「パスカルの三角形」の横一列を、そのまんまグラフにしてみるよ。
両端が1で、まんなかがいちばんてっぺんの山形のグラフになるよね。
このグラフが「二項分布」。
コインは表と裏がおんなじだから、山の左右もおんなじになるけれど、
もし表が裏よりも出やすかったら、山の形もひしゃげてきちゃいます。
グラフはこーんな感じ。

二項分布
みんなの嫌いな、記号だらけー、の式はこんなの。

 Bin(n,P) = nCx P^x (1-P)^(n-x)

最初に書いてある nCx は、組み合わせ、コンビネーションn個の中からx個とったらって意味。
記号の P は確率、英語では Probability、放送禁止のピーッじゃないからねっ!
コインだったら P = 50% = 1/2 だよね。
P^x は、確率 P で、x回やったら、っていう当たりの確率。
(1-P)^(n-x) は、当たらなかった方の確率、これで式が完成ー!

「平均はnP」
  m = n P
「分散nP1引くP」
  σ^2 = n P (1-P)
計算したらそうなりますよー、ってことで軽ーくスルー。
とりあえず P = 1/2 にして想像すると、
 平均 = コインを投げた回数x1/2
 分散 = コインを投げた回数x1/2x1/2
ってなるよね。
分散は二乗なんだって、覚えてるかなー?
ここまで想像がつけば、式を覚えるのは簡単だよね。

「確率うんと小さくしたならポアソン分布」
確率Pがうーんとかたよっていて、小さくなった形を「ポアソン分布」っていうんだ。
グラフに書くとこーんなの。

ポアソン分布
ポアソンっていうのは人の名前なんだけど、日本語にしたら「さかな」かな?

「試行回数大きくしたなら正規分布」
パスカルの三角形がうーんと大きくなったら、だんだんなめらかーな山になってきて、最後は「正規分布」になっちゃいます。
「正規分布」は大事だから、次回のお楽しみっ!

「スターリングの公式」・・・って、これはチョッチむずかしそーだね。
なので、ここんとこは希望者だけの特別補習!にしちゃいます。(予定、果たして希望者いるのか?)
ミク姉が、手取り足取り教えちゃうぞ!

そんじゃねー、Adieu(アデュー)

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